スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

虎鉄の日記:戦語


 さて、まずは死と生について考えてみよう。
 死の対義語は生である――おそらく正しい。
 死は生の終着である――正しいんじゃないかなあ。
 生は死への餞である――なんとなく正しい気もする。
 生あるからこそ死がある――正しくない事もない。
 が。
 そんな事は割とどうでもいい。
 たった一つの真実を挙げるとすれば。

――生と死は等価である。

 少なくともこの場所では、それが正しい。



――激しくどうでもいいなぁ。

 益体も無い思考に嘆息しながら、右手に見えた敵の背中に斬りつける。
 ドス黒く変色した赤色を撒き散らしたのは、いかにもサラリーマンですよーと主張するような暗色のスーツに身を包んだ、何の変哲も無い男性だ。まぁ、開いた腹からこぼれ出た内臓を引きずって、命ある者に襲い掛かる点を変哲ではないとすればの話だが。
 背後からの一撃をうけた(元)男性はバランスを崩し、そこをどこからか飛来した炎の塊に打ち据えられて人型の松明にジョブチェンジを果たした。これも一種の火葬だろうか。だとすれば、あの男性はきっと浄土に旅立てるだろう。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
 まぁ、浄土なんてもんがあるかどうかまでは責任もてませんけど。
 口元を苦笑とも嗤笑ともつかない形に歪めて、視線を周囲へ走らせる。
 とりあえず手の届く範囲に敵は無い。
 転がっているのは無数のかつて生きていたもの。
 今は死んでいる。
 なら別段気に留める事も無い。
 視線を前方、少し遠くに投げれば、雲霞の如く犇く人の群が見える。
 さてさて。
 あのうちのどれくらいが生きていて。
 あのうちのどれくらいが死んでいるのか。
 見ているうちにも腐敗した爪に、歯にかけられ、倒れていく人がいる。
 銀誓館の生徒だろう。
 明らかに致命傷を負った誰かさんは遠目にも判るくらい絶望的な倒れ方をして、程なくその体のうちから力強い光を沸き立たせ、途端に起き上がると戦列から離脱した。あれだけ派手に裂かれた胸もどうやらなんともないらしい。いまだ敵と戦い続ける仲間達に「すまないっ」なんて声をかける余裕すら見せて、悔しげに顔を歪ませたその人は驚くべき事に自分の足で後衛へと下がっていった。
 その様に、思わず空を仰ぐ。
 ここに。
 この場所に。
 生と死の線引きがあるのだろうか。
 あまりにも生(いのち)が安い。
 あまりにも死(おわり)が易い。
 なら。
 そんなの、どっちだって同じ事じゃあないか?
 この場所のいったいどこに、その二つの違いがあるんだ?
 生と死が限りなく漸近する。
 1と0が=で結ばれる。
 ようするに。
 ここは――戦場だという事だ。

「んなこた見れば判りますけどねぇ」

 後頭部をがりがりと掻いて、走り出す。
 前へと。生へと。死へと。
 戦うために。生きるために。死ぬために。
 右手には深紅の処刑剣。
 左手にはそこらで拾った日本刀。
 面倒だなぁ、と呟いて。
 鳳凰堂・虎鉄は戦場を駆けた。


――3月30日の昼下がり。
   ある街で行われた戦争の、とある一角での話である。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。