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虎鉄の日記:竜虎相打つ!!


――銀誓館学園結社『絶技クラブ』道場。

 卒業式の日の夕刻。
 静謐な道場には、華やぎ色めく学園のそれとは明らかに異なる空気が満ち満ちていた。
 夕陽差し込む板張りに立つは四つの影。
 一つは和装の少年、絶技クラブメンバーである――妙蓮寺・白楽。
 一つは制服の少女、絶技クラブ現部長である――比留間・イド。
 そして、壁を背にして並ぶ二人の視線の先。
 道場の真ん中。
 黒々とした影を床に落とし、相対する二人の少年。

 絶技クラブ前部長――狢・蓮。
 絶技クラブ平部員――鳳凰堂・虎鉄。

 鉄血の仇花と鉄(くろがね)の虎が、そこに向き合って立っていた。


「貴方とこーするのも久しぶりですねぇ」
 どこか感慨深げに、虎鉄が笑う。
 肩をすくめる所作には気負ったところも無く、表情には親しみが満ちている。
「確かにな」
 どこか面映げに、蓮が頷く。
 何かを思い出しているような表情には憂いも無く、物腰はどことなく穏やかに見える。
 言葉を交わす二人を包むのは、春風のぬくもりを思わせる心地よい感情だ。
 気の置けない者同士の間にだけ存在する、あの安らいだ空気である。 
 だが、そんな二人を見守るイドと白楽は、言いようのない感情に短く唾を飲んだ。
 ただ同じ場所にいるだけだというのに息苦しくなるような。
 空気自体が重く鈍い材質へと変質してしまったかのようにさえ感じる。
 まるで、砂の詰まった水槽だ。
 それほど狭くも無いはずの道場が、30cm四方の匣のように総身を圧迫する。
 幾たびの死線を潜り抜けていた二人の闘士は、その錯覚の正体に気付いていた。
 目の前。
 朗らかに笑いあう二人の少年。
 彼らの纏う空気が、道場を包み、覆い、塗り潰し、飲み込んでいるのだと。 

「まー、蓮さんに限って腕が鈍ってるってー事もねーでしょーけどねぇ。ホラ、そこはそれ。なーがい事立ち合ってませんでしたからねぇ~。私としちゃーいらねー心配もしよーってなもんですよ」
「要らない心配だ……と言いたいところだが、気遣いには感謝する」

 飄々と語る土色と、淡々と応ずる黒色。
 落日のオレンジと、伸びていく影の色。
 単色のコントラストに染め上げられていく世界の真ん中で、言葉を交わす。
 まるで、何かを確かめ合っているかのように。
 或いは、何かを先延ばしにしようとしているかのように。
 だが、終りは唐突に訪れた。

「もういいだろう。用件を言え、虎鉄」
「あーはー、バ~レバレっすかー」

 よく砥ぎ抜かれた剃刀を思わせる言葉に、少年はおどけた仕草で両手を上げた。
 よくこんな状況であんな態度が取れるものだ、と白楽は感心すら覚えた。

「率直に聞く。今日、俺を呼び出したのは何故だ?」
「遠回しに行きましょ。私達、一応は今日で卒業じゃあねーですかぁ?」
「それで?」
「そーれでですねぇ、ホラ、こー、思い出作りってゆーかぁ。思い残しは無くしときたいんですよ~」
「思い残し?」
「そそ、おっきぃおっきぃ思い残しです~」

 まるで道化のような言葉回しにさえ、少年は揺るがされない。
 まるでその先に続く言葉をしっているようだ、とイドは一抹の不安を覚えた。

「それで、お前の思い残しとはなんだ?」
「簡単至極――端的に言えば、貴方と私、どっちが強いのかってぇ事ですよ」

 その言葉を、少年は祝いのように口にした。
 その言葉を、少年は呪いのように受け止めた。

「愚問だな。比べるまでも無い事だろう」
「賢明ですねぇ。始める前から逃げるんですかぁ?」

 言葉が、世界を凍りつかせる。

「挑発にしては安いな」
「お高くとまってもしゃーねぇでしょ?」

 互いの一挙一動が、刃物のようにさえ思える。

「本気か」
「当然」

 瞬間。
 道場に満ちていた形のないものが、数倍の濃度をもって圧し掛かってくるのを白楽とイドは感じた。
 殺気と呼ぶには鈍く、しかしそれ故に揺ぎ無い意思。
 それは――戦意だ。
 向かい合う二人の少年の、何が変わったと言うわけでもない。
 土色の髪の少年は相変わらずヘラヘラとやる気の無い笑みを浮かべている。
 夜色の髪の少年は相変わらず微塵も揺らぐ事無く向かい合う少年を見据えている。
 だが、それでも。
 今ここに立っているのは、最前までの二人とはまったく別の生き物だった。
 ごくり、と。
 唾を嚥下する音がやけに大きく思えた。乾燥した眼球が痛い。
 さっきから自分が一度もまばたきをしていない事に、ようやくイドは気付いた。
 そうして、眼前の二人を思う。
 能力者としての戦力を問うならば、これは絶えず実戦に身を置いてきた虎鉄に分がある。
 長く能力者としての戦いから離れていた蓮では、今の虎鉄を下す事は難しいだろう。
 だが。
 だが、能力者としてではない、『人間』としての戦闘能力であればどうか。
 失踪する以前の勝率ならば蓮に軍配が上がる。
 蓮が自分達の前から姿を消してから鍛錬を怠っていなければ、その戦力差は動いていないはずだ。
 だが、と白楽は思う。
 そもそもこの鳳凰堂・虎鉄という調子のいい先輩が、それらの手合わせにおいて本気であったのかと問われれば、自分は答えに詰まるだろう。
 それこそ形の無い化物のような人物である。
 単純に答えを出せば足元を掬われる――そう、彼の戦士としての勘が告げていた。

「あぁ、蓮さん。手加減が欲しかったらお早めにお願いしますよ~?」
「そうさせて貰おう。お前だって負けた言い訳を考える時間は長い方が良いだろうからな」

「上等だ」
 ぎちり、と牙を剥くケダモノのように。
 鳳凰堂・虎鉄が嗤う。

「当然だな」
 きしり、と刀の鯉口を切るように。
 狢・蓮が笑う。

 その笑みに、イドは理解する。
 ああ、この二人は、お互いを信じている。互いの実力を、自分以上に信頼している。
 そしてだからこそ、二人は一切の手加減をしないだろう。
 信じているからこそ、その一撃を、相手を殺す気で放つだろう、と。

 その笑みに、白楽は理解する。
 ああ、この二人は、自分には止められない。止める事など、できっこない。
 例えどちらかがどちらかを殺そうとしていても、自分には何もできないだろう。
 例え何かができたとしても、その一撃は、確実にもう一方の命を奪うだろう、と。


「征くぜ」
 虎が、咆る。
「来い」
 竜が、哮る。

――牙と牙が、ここに決着を穿つべく駆け出した。


 動いたのは同時だった。
 弾かれるように大きくバックステップを踏んだ虎鉄が、自分用のロッカーから家庭用ゲーム機の本体を力任せに引きずり出した。荒々しい動作。それに合わせるように、こちらも後ろへと駆け出していた蓮が備え付けのテレビを運び出してきた。一瞬の乱れも無い一連の動きに内心で舌を巻きつつ、虎鉄もまた自らの動きを加速していく。流れるような連続動作。床の上に置かれたテレビの横にゲーム機を設置すると、ポケットから取り出したコード類を魔法のように接続していったのだ。だが、まるで示し合わせたかの如く、蓮の行動は澱みなかった。そうする事を予め知っていたかのように躊躇いなく、懐からチャクラムのような形状の薄い円盤を取り出した。ゲームディスクだ。その正体を戦闘によって鍛え上げられたイドの眼力が看破するも、既にディスクはゲーム機の中へと吸い込まれていた。なんという早業か。それは最早奇術の域に近い。一種荘厳な音と共にテレビ画面にタイトルロゴが現れた時には、二人は黒光りする異形のコントローラーを手に胡坐をかいていたのだった!

「あ、じゃあ私ガ○ル使います。ガ○ル、おう」
「お前ガ○ル使うなよ。俺ガ○ル使うって」
「だ、ちょ、貴方ガ○ル使わないでって!」
「お前バ○ソン使っとけよ! お前バ○ソン好きだろ!」
「だからガ○ル使わないでって! おい! おい!! ガ○ル!!

「「ガ○ル使うなってーーーーーーーーーッッ!!!」」

「あ! あっしも!! 次あっしと交代しておくんなし!!」



「むぎゃおーーーーーーーーーーーっ!!
てめぇらまとめてファッキン侍ですッッッ!!!!



<後日談、という名のオチ>
 その後、王道どころか人類の限界まで突破した鉄拳少女のペガサス流星拳によって、
 盛大なる馬鹿二名と巻き添えを食った一名は冬の空の星と散った。
 完治までは5日間の時間が必要です。

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これは

何というファッキン侍。ゲームに本気すぎるぜ!
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Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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