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虎鉄の日記:渇ク月 嗤フ蜘蛛


――喉の渇きに、部屋を出た。


(微グロ注意)

 仰いだ空はぬばたまの闇に沈み、雲は死んだように凪いでいる。
 如月とはよく言ったものだ。
 澄ました顔で浮かぶ月は、遥かな俗世を嗤うが如く。
 ぬるり、と纏わりつく夜気を切り裂いて。
 銀色の月を追うように、走る。

 酷く、喉が渇いていた。
 暴力的な枯渇は、焦げるような熱に似る。
 今すぐに喉を掻き破って、新鮮な空気を貪りたいと思うほどに。
 喉が、熱い。
 焼けるようだ。
 焼け落ちるようだ。
 吐き出した息が燃えるように白く煙る。
 ああ、けれど。吸い込んだ外気はそれ以上に燃えていた。
 剥き出しの肌が痛い。
 纏わり付く空気が重い。
 夜の温度に、火傷する。
 鋳溶かした鉄の中で溺れているかのよう。
 溶けてしまう。熔けてしまう。鎔けてしまう。(蕩けてしまう)
 このままでは、とけてしまう。
 喉を炙る炎に、ナカから溶けて消えてしまう。
 ああ、だから、早く。
 早く、何かを(■■を)、飲まないと。 

 走る。走る。走る。
 闇を纏い、影に紛れ、風よりも速く駆け抜ける。
 煌びやかな夜光(ネオン)を裂いて、焦燥のままに夜を行く。
 誰の目にも映らぬ暗夜行。
 餓えたケダモノのような自分の呼吸が、やけに耳に付いた。

 ふと、目を留める。
 若い女が一人、道を歩いていた。
 どこからかの帰りだろうか。
 まばらな街灯の下を行く表情は、どこか心細げである。
 ああ、それはそうだろう。
 もう月も高い。もう夜も深い。女性の一人歩きは不安もあるだろう。
 そうだ、少し声をかけてみようか。
 なんなら家まで送ってあげてもいい。
 困っている人には親切に、それが■の信条だったはずだ。
 いつものように飄々と、怖がられないよう陽気に暢気に声をかけよう。
(カオもカラダもコノミじゃないけど、フトモモだけはワルくないし)
 
「………………ぁ」

 あれ?
 ■は今何を考えていたっけ? 
 まあいい。思い出せないのなら、大した事ではないのだろう。
 ああ、それにしても喉が渇いた。
 早く、早く早く、早く。
 早く、■かを■■ないと。

 走る。飛ぶように走る。
 飛天の如く走り、天魔の様に走る。
 そうして、そこに辿り着く。
 朽ちた学び舎。果てた校舎。打ち棄てられた、小学校へ。

 ■■■■■■■■■■。
 ■■■■■■■■■■■■、■■■■■■、■■■■■■■■■■■■。
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 ■■■。■■■■■。■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

――ああ、なんて、美味しい。

 音を立てて嚥下する。
 飲み下しても飲み下しても溢れ出す■■を、果てどなく飲み下す。
 ばたばた、と動く。
 おそらくは反射のようなものだろう、意図した訳でもないのだろうが、顔を蹴られた。
 邪魔くさい。
 細く白い■に牙を立てる。
 しっかりと固定して、そのまま一息に毟り取った。
 吊り下げられた■■の体がびくりびくりと痙攣する。
 けれど、■■を■■の■で■■■かれているせいで、動くのはぶら下がる■■だけ。
 まるで不出来な操り人形のようだ。
 その連想がとても可笑しくて、思わず声をあげて笑ってしまった。
 そのせいだろうか。
 背中から生えた■■がぎちぎちと動き、■■の傷口を押し広げる結果となる。
 すると■■の■はますます激しくのたうち、その様に■はますます笑いを誘われるのだった。
 ああ、なんと容易い永久機関。
 己が尾を食む蛇のように、■と■■が繋がっている。
 ぼたぼたと零れ落ちてくる■■を飲み干しながら、その恍惚に破顔する。
 愛しさにも似た温度が、心臓の横で燃えている。
 これが君の味なのだとしたら、なんと素晴らしい事なのだろうか。
 堪らなくなって、脚を動かす。
 人の物ではない異形の節足がさらに数本、■■の体を貫いた。
 柔い肌を破り、瑞々しい肉を裂き、真珠のような骨を砕き、また肉と皮を越えて、外気に触れる。
 ■■の狂騒はいよいよ激しく、その小さな体を苛む苦痛がどれ程のものかを窺わせる。
 でも、やめてあげない。
 先に開けたトンネルに二本の足を添えて、みぢみぢと引き裂いた。
 絶叫。
 聞く者を眠りに誘う歌を紡ぐ喉が、赤色のオペラを奏でた。
 一滴も零さないように舌を這わす。
 甘い痺れが舌根から脳髄を串刺し脊髄を滴り下腹へと落ちていく。
 絶頂感にも似た愉悦に陶然とする。
 ああ、もっと欲しい。もっともっと味わいたい。もっともっともっと飲ませて欲しい。
 もっと。もっと。もっともっと。もっともっともっと。もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!!!!

「くひ、ひ、ぃひゃひひ、ひ、ぁはは、あははははははは、ははははははははははは!!」




………。
……………。
…………………。


  ◆  ◆  ◆


――目を覚ました。

 自室のベッドの上で半身を起こして、鳳凰堂・虎鉄は首を傾げた。
 なんだろう。
 なにか、酷く奇妙な夢を見ていた気がするのに、それが思い出せない。
「おかしいなぁ」
 呟いてみても、記憶が戻ってくる訳もなく。
 まあ、夢なんて元々そういうものだろう、と納得しておく事にした。
「………あれ?」
 そこで、ふと気付く。
 何か、口内に残留する味がある。
 さて、昨夜はちゃんと歯を磨いてから眠った筈だから、晩餐の残りという事もないだろう。
 となると、これは一体どういう訳か。
 眠っている間に何か盛られたか、とも思ったが、流石にそれで目覚めないほど腐ってはいない。
 となると、果たして?
 腕を組み、その違和感に眉を寄せる。
……けれど。
 舌先に残るその味は。

「ああ、甘いなぁ」

 もう一度味わってみたいと思ってしまうほど、甘美なものに感じられた。

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神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
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