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決戦前夜(笑)

―――今回は縮小サイズミスったため絵の画質が悪いです。

しかし我ながら、毎度毎度更新内容が長いですね。
もっと短く話を作れるようになりたいなー、と思う今日この頃。
そして勝手に友情出演も毎度の事。
作中のキャラクターに関してご不満御座いましたらご連絡下さい。
直ちに削除いたします。

・友情出演
狢・蓮(b02738)



 部活が終了しメンバー全員が帰宅した『絶技クラブ』道場で、鳳凰堂・虎鉄と狢・蓮は向かい合っていた。
 窓から差し込んだ月明かりだけが板張りの床を冷たく照らし、対峙する二人の影を長く貼り付けている。虎鉄と蓮は3m程の距離を置いて立ち、油断無く構えた得物越しに視線を交わす。二人が構えている物は殺傷能力を極端に殺がれた訓練用の木刀である。にもかかわらず、仄青い月光の中で対峙する二人の姿は、さながら侍同士の立ち合いのようであった。
「征きますよ」
 虎鉄が言った。
「いつでも来い」
 蓮が答えた。
 先に動いたのは虎鉄の方だった。爆発的な踏み込みは最早跳躍に等しい。彼我の距離をただの一歩で零へと変えて、鳳凰堂が踊りかかる。
 対する蓮は不動。剣先すら動かす事なきその姿は、さながら鋼鉄の剣。何人たりとも砕く事能わず、触れる物全てを断裁する刃と化して狢が待つ。
 号砲一声、虎鉄が吼えた。
「必殺! 柳生真陰流超奥義(超嘘)―――天地神妙けーーぅおごぶえげばぁっ!?!」
 ガバッ、とでも効果音がつきかねない勢いでイキナリ木刀を大々々上段に振りかぶったマヌケの鳩尾に、蓮の繰り出した全く容赦の無い突きがめり込んだ。

tu


「……………」
 グルングルンと回転しながらブッ飛んでいくアホを無言で見送る。
 無論驚愕している訳ではない。単にあまりに呆れて言葉が無いだけだった。
 とりあえず残心を解き、芸術的な体勢で軟着陸を果たした虎鉄へと近付いていく。えっと、これはなんて言ったか……犬神家? 首がなんとも危険な角度で曲がっているようだが、気にしたら負けかな、と蓮は思うことにした。
「おい虎鉄、生きてるか?」
「死ンデマス………がふっ」
「よし、生きてるな」
 うむ、と蓮は一人頷き、虎鉄の首根っこを掴んで立ち上がらせた。自分より身長のある人間一人を片腕で持ち上げるその膂力もさるものながら、それ以上に見事なシカトであった。
 蓮はいまだにゲホゲホと咽ている虎鉄を尻目に開始位置まで戻り、木刀を下ろして礼をした。真面目な男である。虎鉄はまだ痛む腹を押さえつつも蓮に倣って開始位置まで戻り、木刀を下ろし頭を下げる。
 その下げた頭に、問が落ちてきた。
「で、どういうつもりだ?」
「は?」
 唐突な質問に、虎鉄は少しばかり戸惑う。
 どういうつもりと言われても、いったい何のことだろう。
 虎鉄は頭を下げたまま、問われた意味を考える。この立会いに誘ってきたのは蓮の方だ。今日の部活が終わる前に自分の元に来て、理由も告げず「練習後ここに残れ」と言われたのである。どういうつもりと言うのなら、むしろこっちが聞きたいくらいだった。いや、しかしだとすると、ひょっとして今の立会いに関してのことだろうか。確かに少々ふざけ過ぎたと自分でも思わなくも無いが、悪ふざけをしない鳳凰堂・虎鉄など鳳凰堂・虎鉄ではない。これくらいの冗談のやりとりは彼らの間では日常茶飯事に近い。
―――いや、ちょっと待て。
 もし、もしもの話、彼がこの立会いに並々ならぬ覚悟をもって臨んでいたとしたらどうだ。そういえば残れと言われたときも、彼は他のメンバーに聞かれないようにこっそりと声をかけてきたではないか。ならば、どんな理由かは知らないが今の一戦が彼にとって大きな意味を持っていた可能性は否定できない。だとすれば、今の自分の行為は蓮の意志を土足で踏みにじったようなものではないか。
「す、すいませんでしたーーーーーっ!」
 そこまで考えが至った瞬間、虎鉄はその場で飛び上がり着地と同時に土下座で謝った。俗に言うジャンピング土下座である。
「まさか! まさか私の悪ふざけが蓮さんをそこまで傷付けてしまっていたとわ! こ、こうなりましたからにはこの鳳凰堂虎鉄、腹切ってお詫びする所存でありますっ!!」
「………いや、何を勘違いしているかは知らんが、俺が聞いているのは今日の鍛錬中の事だ」
「………は? え~っと、なんのことでしょう?」
 首を傾げつつ顔を上げれば、こちらを真直ぐに射抜く瞳があった。
 鋼のようだな、と虎鉄は思った。曲がる事のないその視線は、人によっては冷たくも感じられるだろう。だが、冷たい鋼鉄の中にはいつだって熱い魂が込められているものだ。目の前の彼もまたその例に漏れない事くらい、狢・蓮を知る人間ならば誰だって知っている。
 だからこそ虎鉄は疑問に頭をひねる。彼にそこまで真剣な表情をさせるような事など、全く心当たりが無かったからである。
 蓮はしばらく黙って虎鉄を見ていたが、その顔から不理解の色を読み取ったのか溜め息を一つつくと、静かに口を開いた。
「お前が、明日の運動会の事でなにやら悩んでいたようだったからな」
 その一言でようやく理解したのか、虎鉄は見るからに慌てだした。
「話してくれないか。いったい、なんの種目に参加したかったんだ?」
「あ、いや、それは………」
 虎鉄は明らかに目を逸らし、口ごもった。
 言えないのか、と蓮は目を伏せる。俺達にも、言えない事なのだろうか。
 狢・蓮は鳳凰堂・虎鉄の事を同じ部活の『仲間』だと思っている。そこにはそこそこの月日を共にしてきた連帯感もあるし、信頼もある。それはおそらく他の仲間達も同じ事だろうし、目の前で頭を下げている虎鉄もまた同じ想いだろうと思っている。信じている。だからこそ、彼が運動会の行事に参加したかったと呟いたとき、絶技クラブメンバーの誰もが親身に話を聞こうとし、できる事なら叶えてやろうと思ったのである。 
 しかし、虎鉄は話してくれなかった。
 人にはそれぞれ触れられたくない事や他人に知られたくない事もあるだろう、それは蓮も理解しているし、そんな事を無理矢理に聞き出そうとは思わない。だが、それでも蓮は思ってしまう。話してはくれないのか、仲間を信じてはくれないのか、と。だから今日、蓮は虎鉄を呼び出したのだ。ひょっとしたら、二人きりでなら話してくれるのではないか、と期待して。
 しかし、虎鉄は話してくれなかった。
 勿論、虎鉄だって蓮達の気持ちに気付かぬほどの愚か者ではない。だからこそ話せない自分に恥じ入り、どう対処すれば良いか判らず冷静さをなくし、その態度が一層仲間達に心配をかけることになる。
「………」
「…………」
 重苦しい沈黙が、二人の上に落ちた。
―――しかし、何故こいつはここまで頑なに口を閉ざすのだろう。
 沈黙の時間から意識を逸らすように、蓮はそんな事を思考する。
 今回の運動会の種目からして、人数的な問題はどうあれ出たがる事が恥ずかしいような競技はなかったはずだ。いや、たしか競技とはまた別にいくつかのイベント事があったか。だがそれにしたって、この男が恥ずかしがるような競技はなかったと思う。可能性があるとしたら……「ふうせんぱんつで走りぬけ!」か、いや「姫君奪還レース」でお姫様側になりたかった、とか……いや、それこそ有り得ない。その程度で恥じるような男はそもそも鳳凰堂・虎鉄ではない。この男は率先してそういうネタ事に首を突っ込みたがるタイプだ。だとすればなんだ? もう他には競技は残っていない。いや待て、競技という枠に囚われて考えるな。イベント事は他にもあったはずだ。例えばキャンプファイアーや屋上でのお茶会、救護テントでの防衛戦なんかもあると聞いている。そうだ、それに………

―――得点板裏の伝説とか。

「あ………」
 理解、した。
 思わず目をやれば、虎鉄はさっきより深く頭を下げていた。これは謝っているのではない。顔を見られないように俯いているのだ、と蓮は気付いた。
 そうか、そういう事か。
 つまりこの男が言い出せなかったのは仲間を信頼していないからでも遠慮からでもなく、単に恥ずかしかったからか。
 思わず浮かべそうになった笑みを、蓮は意志の力で抑え込む。その内容はどうあれ、虎鉄はそれを自分達に話せないほどに恥ずかしがっているのだ。それを笑うのはあまりにも無神経というものだろう。
 とは言え、やはりそうなると浮かび上がってくる疑問がある。
 即ち………告白する相手は誰だったのか、という疑問だ。
 鋼鉄の如き意思を持つとは言え、狢・蓮とて青春真っ只中の十七歳の少年である。この手の話に興味がまったくない訳ではないのだった。無表情を保ったまま、蓮の脳内を思考が高速で駆け回る。
 
 まず、虎鉄が何故自分達の前で参加したい競技名を言えなかったのか。恥ずかしかったから? 確かにそれは大きいだろう。だが、理由がそれだけという事もあるまい。もしも本当に恥ずかしかっただけなのなら、話してしまっても何も問題はないはずだ。自分達はひとしきり彼をからかった後、全力で彼の告白を応援しただろう。そして、そんな事は虎鉄だって判っている。だから、彼が「絶技クラブメンバーの前で」競技名を隠していたのにはまだ理由があるはずだ。そう、例えば………その「絶技クラブメンバーの中に」こそ彼が告白したい人物がいたのだとしたら、どうだ。そうだ、これならば辻褄が合う。だが、そうなると一体誰だ。絶技クラブの団員は現在9名、虎鉄自身を除けば8名になる。その内女子は4人だから、必然的にこの4人の内の誰かになるということだが………

 そこで、狢・蓮は重大な事実に気付いた。
 もし本当に絶技クラブ内に想い人がいたとしても、虎鉄自身がそれを明言さえしなければ、競技名を口にする事になんら問題はないのだ。自分達がその相手の名を聞きだそうとしたところで、嘘をつくなり、或いはその場で告白してしまうなりと対処は出来る。なのに、彼はそれを拒んだ。だとすれば、どういう事になる。何故彼は口をつぐんだ。それは、ひょっとして、心に疚しい事があったからではないだろうか。そしてそれはひょっとしたら、その相手というのが口に出して言う事に忌避を抱かれてしまうような相手、という事ではないか。
 そう、つまり。
 端的に言ってしまうのであれば。
 鳳凰堂・虎鉄は―――男に、惚れているのではないだろうか!
 ガーン、とエフェクトが出てもおかしくないほどの衝撃の事実だった。
 蓮は無言のまま視線を落とした。ちょうど見上げてきた虎鉄と視線が合った。
 狢・蓮はそのまま、厳かとさえ言える口調で、自分の辿り着いた答えを口にした。
「虎鉄、相手は…………暁か?」
「なんでやねんっ!」
 虎鉄の壮絶なツッコミが炸裂した。
 む、違ったか、と眉を顰め、
「ならば狗星か。たしかに、お前らは結構仲が良さそうだったな……」     
「違うっつーの!!」
 うむ、と納得する蓮の眼前で、虎鉄が見事なまでにズッコケていた。
「なに! 違うのか!?」
 目をむいて驚愕する蓮。
「違う! 当たり前だろーがっ!」
 ガーッ、と吼える虎鉄。かなり「素」に戻っていた。
 その声にハッと我に返った蓮は、虎鉄から一歩後ずさりして距離を取る。訝しげにこちらを見やる長身を見据えつつ、考える。まさか、有り得ない。だが、それ以外の可能性はすでに消えてしまっている。ならば消去法として、これ以外の答えが存在しない。だが、だがしかし、信じろと言うのだろうか、この真実を。真実は時に残酷である、とは言うが、これほどの残酷が許されていいのか。
 蓮は慎重な口調で、幾つもの推理の果てに遂に辿り着いた唯一の真実を口にした。

「まさか―――――俺か?」

「なーーーーーんでそうなりますかッ!? 違いますよ違うに決まってんでしょーがッ!! 飛鳥さんですよ鳳翔・飛鳥さん―――――――――って、あ」
 なんだ飛鳥か、と頷く蓮の目の前で、虎鉄の時間が停止した。
 呼吸もしていない、指先一つ微動だにしない、多分心臓も止まっている。それこそ完全な停止であった。
 そして、カウントダウン。
一秒、虎鉄の顔が真っ青になる。
二秒、真っ青になった顔が耳まで真っ赤に染まる。
三秒、焼けたトマトのような顔を滝のような汗が伝う。
四秒、まったく動かなかった虎鉄の全身がガクガクと震動する。
五秒、そして時は動き出す。
「ぎゃぼーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
 奇声を上げて、鳳凰堂・虎鉄が墜落した。
 墜落としか言いようのない角度で床へと垂直落下した虎鉄は顔面から床とのランデブーを果たす。面の皮が厚いのか、それとも面目丸潰れのジェスチャーか、などとどうでもいい考えが蓮の頭をよぎる。直立不動体勢のままうつ伏せに倒れてピクリともしない虎鉄に、蓮は声をかけた。
「虎鉄、生きてるか?」
「死ンデマス………ってゆーか、イッソコロシテ」
 声は地獄の底から響いてくるようだった。
 しばらくは蘇生してこないだろう虎鉄はひとまず置いておくとして、蓮は先程の推理を反復する。ふむ、なるほど、どうやら詰めが甘かったらしいな。などと反省している彼は気付いていない。詰めも何も、後半の推理それ自体が全く見当ハズレの普通なら絶対に思いつかないはずの考えであったことに。さすがは『恋愛ポルシェ式ヤークト・ティーゲル』の名を(密かに)ほしいままにする男であった。
 彼が再び視線を下げると、ちょうど復活した虎鉄がのろのろと立ち上がるところだった。
 頭半分ほど高いところにある彼の目を、真っ直ぐに見据える。
 正直、聞いてみたい事はいくつもあった。
 例えば、いつから彼女に惚れていたのか。例えば、彼女のどこに惚れたのか。例えば、例えば、例えば……
 だが、それらを問うのは、きっと無粋というものだろう。これ以上は、鳳凰堂・虎鉄という個人に対する侵犯に等しい。それを理解した上で、狢・蓮は率直に、ただ一つだけを問う事にした。 

「告白はするのか?」

「―――さぁ? どうでしょうね」
 鳳凰堂・虎鉄は答えなかった。
 ここで「する」と答えられるほど、彼は勇敢ではなかった。
 ここで「しない」と答えられるほど、彼の気持ちは半端ではなかった。
 そんな内心の葛藤を読み取ったのか、あるいは元々答えなど期待していなかったのか、蓮はそうか、とだけ頷いて彼に背を向けた。
「時間をとらせて悪かった。明日は体育祭だからな、今日はもう帰って休め」
 木刀をしまい、引き戸を開けて道場から去ろうとする蓮の背中に声がかかった。
「蓮さん、あの、この事は………どうか内密に」
「……何の話だ?」
 振り返りもせず、彼は答えた。
 自分は何も聞いてなどいない。今夜ここでは何もなかったのだ、とその背中が告げていた。
 虎鉄はその背中に無言で頭を下げ、蓮は無言で手を振った。
 引き戸が音もなく閉められる。
 彼らには、それだけで十分だった。
 今宵、この場で起きたことは全て無かった事になった。
 彼は何も語らず、自分も何も語るまい。
 誰も知らぬ、一夜の出来事。
 ただ月だけが、事の顛末を見守っていた。


―――後日談。
 あの夜、寮へ帰った虎鉄は告白の決心を固めたはいいがそのせいで緊張してしまいなかなか寝付けず、目を覚ましてみればとっくのとうに体育祭も終盤の時間だった。思いっきり寝過ごした事に気付いた虎鉄はグラウンドの隅っこで独り地面に「の」の字を書きながら、キャンプファイヤーを眺めていた。
 なんとも情けない事この上ないが、つまりはそれが、鳳凰堂・虎鉄が鳳凰堂・虎鉄であるゆえんでもあった。
 炎に照らされた三日月が、ニンマリと彼を笑っていた。

The day before that goes out to war? ………out

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非公開コメント

鳳凰堂かんたーびれ

>「まさか―――――俺か?」
一瞬、
『アッーッッ!!』とか『ウホッ、いい男』なのかぁぁぁ!
と、焦りました。いやぁ危ない危ない。

・・・・この推理かなり自信があったのだが
まだまだ精進がたりん

秘めたる心か・・・ええのう。
あ、それと・・・わしはそのケは無いでのう。(笑)

うやや・・・な、何があってそこまで気に入ってもらえたのか、個人的には、ものすごく・・・この子が相手でごめんなさいと土下座したい気分ですが、気に入っていただきありがとうございますです♪

天流さんとは・・・あれですよね、恋云々より、心友(byジャイ○ン)って感じの方が近いかと思ってます♪
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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