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虎鉄の日記:木漏れ日の館の黒と茶色の悪魔


 休日の昼下がり。
 カーテンを下ろした暗い自室のベッドの上で、虎鉄は丸くなっていた。
 別に体調が悪い訳でもなく、ただなんとなく色々やる気が湧かないらしい。
 だからって不貞寝かよ。
 実に不健康な話である。
 何度かモゾモゾと芋虫のように寝返りをうって、しばらくすると虎鉄はむくりと起き上がった。
「……………」
 そのままノソノソと部屋を出て行く。
 あ、つまづいた。

………なんとも重症のようだった。


「おや、鳳凰堂クン」
 部屋を出たところで、声をかけられた。
 ギギギ、と錆びた音でも聞こえてきそうな動きで顔を向ける。
 見れば廊下の向こうから、艶やかな黒髪を揺らした裏沢・由那さんが歩いてくるところだった。
「ああ、由那さんですか。どうもです~」
「どうかしたのかい? 随分と元気が無いけれど」
「あー……いえ、ちょっと寝不足ですよ~」
 ヘラヘラと適当な返事を返しながら、気付かれない程度に由那さんを上から下までを観察する。
 それは最早習性に近いもの。
 人間を前にすると、無意識のうちに武装の携行、重心の位置、体勢、距離を確認してしまう。
「………おやぁ?」 
 それで、気付く。
 由那さんは両手で抱えるように真っ白なシャツを一枚持っていた。
 けれど、そのシャツは……
「由那さん? それ、夏優さんのじゃあありませんかぁ?」
 うん、何度か見覚えがある。
 由那さんが大事そうに抱きかかえているのは、間違いなく夏優さんのシャツだった。
「うん? ああ、目聡いね鳳凰堂クン、その通りだよ」
「なるほど、で、なんでまたそんなものを?」
「実は私の洗濯物に紛れ込んでいたのさ」
 ここ、私達が暮らす寮『木漏れ日の館』は寮と言うだけあって、食堂もあればお風呂もあり、トイレもあれば当然洗濯機も備え付けられている。しかしながらそれほど多くの洗濯機を設置できる訳もなく、必然的に寮生は同じ洗濯機を使う事になるのだが……基本的に男子と女子の洗濯機使用時間帯は暗黙の了解(という絶対律)によって分けられているが、同じ洗濯機を使っている以上は……まぁ、成る程、洗濯物が混ざってしまうとかそういう事も無いとは言い切れないかな。
 と、不意にある事に気がついた。
「おや? 由那さん、ソレ、なんですか?」
「うん? どれの事かな?」
 私が指し示したソレを見て、ニンマリと笑みを深くする由那さん。
 私の人差し指の先、夏優さんのシャツの襟元には、薄いピンク色の口紅がついていた。
 続いて由那さんに視線を戻せば、ふっくらと柔らかそうな由那さんの唇にも同じ色のルージュ。
「ははぁ……成る程」
 ここにいたって、私はようやく理解した。
 自分が今、随分と楽しそうな場面に出くわしてしまったのだと。
「フフン、気付いたかい鳳凰堂クン?」
「勿論、気付かないとでも思いましたか由那さん?」
 顔を見合わせ、うっふっふと含み笑いを交わす。


「まぁ、あれですよねぇ? 洗濯物が紛れ込んでただけなんですから、偶然ですよ偶然」
「そうだね。そして偶然紛れ込んでいたシャツに、丁度つけていた口紅がついてしまったとしても、これは仕方の無い事だろう?」
「勿論ですねぇ。女の子は忙しいんですから、お化粧したままうたた寝しちゃう事だってあるでしょうねぇ~。ええ、そりゃあもう事故ですよ事故」
「そしてそれに気付かずにうっかり返してしまっても……」
「とぉ~ぜん、善意からの行動なんですから怒られる筋合いはないですよねぇ?」
「いやいや、でもちょっと待て。果たしてこれを天野クンに直接返してもいいものか」
「なにを仰るんですか由那さん! 淑女である由那さんが偶然紛れ込んでいた洗濯物とはいえ、男性に直接物を渡すなんて!! いやっ、ウチそんなんようけ耐えられへん!!」
「勿論そうさ。しかしそうなると困ったね……このシャツはどうしようか?」
「そうですねぇ………さつきさんは確かにしっかりとしておられますがー、それでもやっぱり小学二年生。信用してない訳じゃああーりませんがぁ、やっぱりこういうのは責任能力のある方じゃあないといけないですよねぇ?」
「………と、なると?」
「それは勿論………」

「海部野クンだね」「冬美さんでしょう」

「ところで鳳凰堂クン。今天野クンの部屋には………」
「あ、ちょい待ってください。今携帯で確認取りますから~」
 ピポパプペ。
「……あ、もしもし夏優さん? はい……へぇ……それはそれは………はい、では~」
 プツッ
「現在夏優さんの部屋には夏優さんと冬美さんしかおられないそうですよぉ?」
「ほほぅ、それはつまり……」
「 ヤ ッ チ マ イ ナ って事でしょうねぇ」
「ふ、ふふふふふ………」
「ぐげ、ぐげげげげげげげ………」
「付き合ってくれるかい鳳凰堂クン」
「勿論、地獄の底までも」
 どちらともなくガッシと拳を打ち付けあう。
 かくしてうららかな休日の昼下がり、静かな寮の真ん中で。

――超限定的な地獄の蓋が開いたのであった。




………そしてその数分後。
「兄さん! 今日という今日は―――ッッ!!」
「うぉぉぉぉ!? 知らん! 無実だ濡れ衣だーーーッッ!!」

 阿鼻叫喚の断末魔が漏れ聞こえてくるドアの前。
 とてもイイ笑顔を交わす悪魔が二匹目撃されたとかされないとか。
 まぁ、それはそれで別の話である。


――後日談。
「虎鉄ぅぅぅぅぅッ!! そこに直れゴルァァァァァァァッ!!」
「ちょっ! まっ! なんで私だけぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!?」
 なんてゆーか、あれですね。
 因果応報。
 
  チャンチャン

 
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う、うわぁ…

こ、これは…(汗
すんません、爆笑しました(苦笑)

まあ、このくらいのイタズラ、同じ寮の仲間ですもん、ねぇ…?
ささやかで良いですよね(爽笑)

夏優さんはまあ、ご愁傷様ってコトで…(苦笑)

更に後日談(疑問解消行って見よう!)

Q1.なんで虎鉄だけお仕置き?
え?
何故虎鉄だけ仕置きをしたかって?
そりゃー……(脳裏を走るトラウマ)……。

オンナノコニテヲアゲタラ、オシオキサレルンダゾ?(青い顔で台詞を棒読み)
ソレニ、シショーモオンナノコニテヲアゲチャダメダトイッテタシ(HA,HA,HA,と乾いた笑い)

Q2.虎鉄へ質問
そういえば、あの日の洗濯班って虎鉄の班だったよな?
※そういうわけで、本邦(勝手に)初設定 木漏れ日の館の班分け
 洗濯班(男/女) 掃除班(屋外/屋内) 
 炊事班(料理が出来る人と挑戦したい人)
 比率は2:6:2と推測

悪魔コンビ

虎鉄さんに由那さんはぐっじょぶですね……。
フレアさんの言う様に、仲間だから笑ってすませられるんですね…(うんうん

はっはっは。ごめんね(微笑)

まぁ悪戯心が抑えられなかった……と言うことで許してくれ。
後でご飯でもおごるよ(笑)
ああそれから……鳳凰堂クン、GJ! 絵も含めてね(親指を立てる

………(ウルは小刻みに振動中

ふむ…虎鉄もナツも災難だったなぁ…。
まぁ、由那にお仕置きしようとしても返り討ちだと思うが…。(諸所の理由を見て/ぇー
……まぁ、頑張るのだ…さつきに見つからぬように♪(ぉぃ
では、最後にナツと虎鉄に…合掌…。(笑いを堪えつつ手を合わせ
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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