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虎鉄の日記:Faceless loser


 第三回学園黙示録、ベスト8進出――

 その夜、寮の談話室。
 前回前々回を遥かに超える戦績を残した彼らは、和気藹々とした空気の中、仲間達と今回の反省や感想を交わし、互いの奮戦を讃えあっていた。
「今回はベスト8だったんですし、優勝も射程距離ですよ。次こそ勝ちましょう、ね?」
 鳳凰堂・虎鉄もまた仲間達と同じく笑みを浮かべ――笑っているのはいつもの事だが――次回への意気込みに燃えていた。


「……っと、すいません。ちょっと失礼しますねぇ?」
 突然立ち上がった虎鉄は笑みを浮かべたまま、一人談話室を後にした。
 談話室から聞こえてくるいくつもの明るい声を背中に聞きながら、暗い廊下を進んでいく。
 と言っても、シリアスな理由など無い。
 ひょいひょいと軽い足取りで向かう先はお手洗いだった。


「やれやれ、っと……」
 とっとと事を済ませて洗面台で手を洗う。
 排水溝へ吸い込まれていく水の流れをなんとはなしに眺めながら、回想する。
 思い起こすのは今日の戦い。
 さすがに相手も準々決勝まで勝ち残ってきた実力者達だけあって、驚くほど強かった。
 チームの編成、戦略、個々人の練度――そのどれもが見事だった。
 それこそ、負けてしまっても仕方ない、と思ってしまうほどに。
 けれど、それと同時にあと一歩という感覚もあった。 
 あと一歩、踏み込めていれば――
 あと一歩、大きく避けていれば――
 あと一歩、粘っていれば――
 あと一歩、あと一歩、あと一歩だけ………
「ま、今更言っても仕方ない、か」 
 水を払って顔を上げ、談話室に戻ろうと歩き出して、振り向きざまに視界の端を掠めた鏡に映った自分の顔には、いつも通りの飄々とした笑顔が

――ガシャン

「………え?」
 突然の異音に、間の抜けた声が重なる。
 何事かと思って見れば、洗面所の壁にかけられた鏡が一枚割れていた。
「なんでいきなり……?」
 不可解の表情を浮かべたまま辺りを窺ってみる。
 だが、少なくとも見える範囲には自分以外の人影も、人以外の姿も見つからなかった。
 周囲はまったくの無人。
 皆の騒ぐ声もここまでは届かない。
 室内灯の柔らかい光が降り注ぐ中に、凍るような静寂が満ちている。
 呆然と割れた鏡を眺めていると、不意に、鋭い痛みを感じた。
 何かと思って目をやれば、左手が血に塗れていた。
 ひょい、と左手を目の高さまで持ち上げる。
「あれ?」 
 真っ赤な血で汚れた左手の甲には、鏡の破片らしきものが幾つも突き刺さっていた。
 不思議そうな顔で、それをためつすがめつする。
 角度を変えられたガラス片が室内灯をキラキラと反射した。
 次に、割れた鏡に視線を移す。
 蜘蛛の巣のような罅に覆われた鏡の中、幾筋もの罅に切り刻まれた自分の顔に浮かぶのは、やはり「不理解」の一文字だった。
「あれれれれ?」
 もう一度、じくじくと痛みを訴える左手に視線を戻して、
「ひょっとして、コレやったの私ですか?」
 ようやく虎鉄はそう呟いた。
 なんで、どうして?
 自問してみるが、答えは出ない。
 彼には、その答がわからない。
 自分の胸の奥に息づく、黒々と渦巻く明り一つ無い夜の海のような感情に気付けない。

 彼には――いつも「勝つ事もあれば負ける事もある」だとか「負けてしまっても仕方ない」と考えて、一度だって心の底から「勝ちたい」と望んだ事の無い彼には――否、一度だって「心の底から勝ちたいと思ってそれが叶わなかった事」がなかった彼には――その感情こそが、本当に本当の意味での『敗北』と呼ばれるものなのだという事が、まったく理解できなかった。

 のっぺりとした表情のない笑顔を貼り付けて、
 おかしいなぁ、不思議だなぁ、と呟きながら、
 敗北を知らない負け犬は、キラキラと光るガラス片を引き抜いていく………


 
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勝手にその後の洗面所~自業自得編~

虎鉄が洗面所を出て数分後、洗面所に新たな客が現れた。
彼は用を済ませ、手を洗おうと洗面台に向かった所でソレに気づいた。

蜘蛛の巣のような罅が入った鏡。
中心の辺りには赤黒いもの…誰かの血がこびり付いている。
「あ”-っ!! 誰だよこれやったの!!
 ったく、換えの鏡なんてあったか? 
 それに…怪我もしてるんじゃねぇか、コレ殴った奴は」
そういって溜息をつく。
誰かがコレを殴って、そして怪我をした。
まぁ、自業自得だろう。

だが、それはさておいといて、コレがこのままと言うのは戴けない。
小さい子…小学生達がふざけて鏡の罅に触って怪我をしたら危ないのだ。
能力者だから、小さな切り傷は直ぐに治るだろうが、それでも痛いものは痛いだろう。
「とりあえず、手を洗ってから片付けるか…」
彼はそう呟いて手を洗った後に、愛用の年季のある改造ロングコートのポケットの中に入れてある軍手を取り出し、
片付けと鏡の交換を行った。

後日、鏡を殴り割った犯人が特定され、犯人宛に鏡の費用の請求書が回されたのは…まぁ、自業自得だろう。
----------------------------------------------
勝手にオチを作ってしまいました。
お目汚しの一品ですが、お納め下さい。

難しいですね…。

私も、自分なりに、コツコツやってきましたが、本当に皆さん、色々考えられていて。

黙示録が始まってからは、私はビックリのし通しです。


また、頑張りましょう…。
きっと、何とかなりますよ…♪(微笑)

お疲れ

……あぁ、割れてた訳がようやく分かったぞ…。
っと、いうかお前さんは…負けてそんな事ばっかやってたら出られるものも怪我で出られんようになるぞ??
それに、私なんか数百回そういう事をすれば良いのかも分からんからな♪
まぁ、気を張りすぎずに頑張ってな…。
お前達ならいつかきっと天辺まで行ける♪
じゃあ……とりあえず休め…な??

常勝不敗とはいかないからねぇ

今回は十分健闘の範囲だと思うよ。
勝敗を分けるのは紙一重の差……。頑張っているのは私達だけではないしね。
次でさらに良い結果を目指してがんばろう(微笑)

……。
(ぼそり)……と、割り切れる程器用でも気楽でもないか。お互いに、ね。
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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