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鳳凰堂虎鉄の暴走


「ボンジョ~ルノ~! ピコてつでっす――よろぴこ☆」

「帰れ」
 結社『絶技クラブ』の道場に姿を見せるなりやたらとハイテンションなセリフをぶち上げた鳳凰堂・虎鉄を、狢・蓮は一瞥すらくれずに切り捨てた。
 たまらぬカウンターであった。


「うわーぃ! さすがにそれは酷いんじゃあないですかねぇ~蓮さん!」
 情けない事この上ない声で泣きを入れる虎鉄と、それをアッサリ無視する蓮。
 実にいつも通りのやり取りだった。
「あ、そうそう蓮さん! ちょ~いと聞いて下さいよぉ~!」
 最前のやり取りがまるで無かった事のように、虎鉄はヒョイヒョイと蓮に近付いていく。
 起き上がりこぼしもびっくりの立ち直りの早さである。
 虎鉄が間合いまであと一歩の距離まで近付いてきたところで、蓮は仕方なさげに振り上げていた木刀を下ろした。虎鉄が間合いの外で足を止めたのを気配だけで確認して、軽く息を整える。
 開け放たれた窓からは、傾いた太陽の柔らかな光が、すっかり冷たさを増した一月の風に乗って入り込んできている。うっすらと肌に浮んだ汗が急速に冷えていく感触にほんの少しだけ眉根を寄せて、そういえばもう冬だったな、と蓮は今更な事を思った。
「れ~ん~さ~ん。きぃーてくぅーださぁーいよーぅ」
 そんな蓮の感慨を根こそぎぶち壊すかのように、ギッタンバッコンと奇怪に揺れながら脳天気な声をあげるエアリード機能オフ男。ついでにデリカシーもオフである。
 誰かツールからオプションを開いてこいつのエアリード機能をオンにしてくれ。
 無駄だとは知りつつも、そう思わずにはいられない狢・蓮だった。
「るぇ~んすわぁ~ん?」
 メトロノームよろしくギッコンベッカンと揺れる虎鉄に、蓮は渋々問うた。
「それで……今日はどうした」
「んっふっふ――よくぞ聞いてくださいましたッッ!!」
 ビシッ、とサムズアップを決める馬鹿一匹。
 もう気にしない事にした蓮は無言で先を促す。
 どうやらかなりテンションが上がっているらしい虎鉄は小鼻をピスピスと動かしながら、民衆を革命へと先導する指導者(エセ)のように両手を広げ、叫んだ。
「蓮さん、絶技クラブでミュージカルをやりましょう!!」  
「帰れ」
 即答である。
 たまらぬカウンターであった。
「えー、なんでですかぁ~? きっと楽しいですよぉ~?」
「なんで、はこっちのセリフだ」
 本当にもうなんでさ。
 急に痛み出したこめかみを指で圧迫する蓮に、虎鉄は実にあっさりと言ってのけた。
「いや、実は最近ハマった曲がありまして~」
「お前がやりたいだけか!」
「どうしてもダメですか~?」
「駄目だ………と言うか俺はやらん」 
 (  ̄3 ̄)ブー、と不満がる虎鉄に付き合ってられんと背を向ける。
 なんとなく頭を抱えたくなった。たぶん頭痛のせいだろう。
 一刻も早く道場を立ち去ろうと足を速めるその背中に、虎鉄の声が追いすがった。
「あ、でも、でもでもですねぇ~?」
「なんと言おうとやらない」
「………もうポスター作って張り出しちゃいましたよぉ?」
 ぎしり、と自分の体が凍りついた音を蓮は聞いた。
 蝶番の錆びた扉を強引に開けた時のような音を立てながら、ゆっくりと振りむく。
 そしてあくまでも無表情で、問うた。
 クエスチョン。
「今なんと言った?」
 アンサー。
「ですから、もうポスター作って張り出しちゃいました~」
 ホラ、と筒状に丸めたポスターを差し出す虎鉄。
 それを受け取って、その中身に目を通した蓮は再び凍りついた。



「こんな物………いつの間に」
「そ~れはですねぇ、先日皆さんに一人一人来ていただいて写真撮ったでしょう? それを合成したり切り貼りしたり悪魔と取引したり外なる神々と契約したり妄想具現化の果てに固有結界とか発動してみたりしたんですよぉ~」
 苦労したんですよ~、と得意げに胸を反らす馬鹿を前に、今度こそ蓮は頭を抱えた。
 頭が頭痛でとても痛かった。木の木刀で強く強打されたような痛みだった。
 思い出す。
 そういえば数日前、組技の参考にしたいから、などと言われて写真を数枚撮らせた気がしたが、よもやこんな事に使うつもりだったとは……
「とりあえず学校中に張り出しましたから、宣伝効果もバッチリですよ!」
 いえー、と親指を立てる虎鉄。  
 片手で頭を抱えて俯いたまま、蓮のもう片方の手がその親指をガッシリと掴む。
 掴む→しっかりと握る→万力を込めて向こう側へ倒す→折れる
「おぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」
 断末魔のような悲鳴を上げて飛び上が――親指を握られているので飛び上がれない虎鉄。
 あまりの痛みに直立したまま変な虫のようにビクビクと痙攣する。実に無様であった。
「はっはっは、大げさだな。まだ折れてはいないぞ――残念だが、まだ」
「いや、蓮さん顔が笑ってませんて痛い痛いいったーい! らめぇ捻らないで! 捻らないで折れちゃう! おれちゃいましゅぅぅぅぅぅっ!」 
 ぎぎぎ、と危険な傾斜をつくる親指。
「なあ知っているか? 利き腕の親指が動かない生活はとても不便なんだぞ?」
「知りません知りたくないですぁっあっああっ! く、くやしい! でもって痛い痛いっ! やめ、やめてその角度!! 不思議な痛みがガガガガ?!」
「ここでドキドキ質問タイムだ。親指を無くすのとポスター全部回収して各方面に土下座して回るの、どちらがいい?」
「は、はわわっ、回収してきたら……お、折らないでくれますかっ?」
「ああ、約束しよう」
「だが断る」
 ぽきり。
「おぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」


―――後日談。
 その日、学校中に張り出されていた謎のポスターを滂沱の涙を流しながら剥がして回る虎鉄の姿が目撃された。
 その右手の親指が包帯でグルグル巻きにされていたという噂もあるが、詳細は不明。
 目下調査中である。
ぎゃふん
 
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無くしたはずの親指が………

無くしてませんけどとっても痛ぁ~~いよぅ。orz
えー、狗星さん(邪神)の外部パーツはすべてCGと特殊メイクと遠近法と見間違いです。
ご本人に見られたら怒られそうですねぇ~………
不愉快でしたらご一報どうぞ。即日消去いたしますー。orz

ぬ?これは・・・

ある昼下がり、狗星は一枚のポスターを発見しました。
「おお?これはなんじゃ??」
それは、絶技クラブのミュージカルのポスターでした。
「これは・・・わしか?」
そしてそのポスターには、変わり果てた自分の姿がありました。
「犯人は……鳳凰堂殿か」
早々に犯人の中りをつけた狗星は、そのポスターを剥ぎ取り・・・
「カッカッカッカッ・・・面白いのう」
高らかに笑うと、ポスターを懐に入れてどこかへ去っていきました。

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ウホッ、いいポスター

良いポスターだな。ちょっと借りるぞ
(徐に懐にしまいこむ)

邪神さまへの芸の細かさにしこたま笑わせていただきました。
やはりサンホラはイイですね!

むむっ?

とある放課後の学園の廊下にて。
「あ、お兄ちゃんコレ見てー。
 なんだか面白そーだね♪」
「ミュージアムか…、ふぅん、おもしろそうだな」
天野夏優とその妹、さつきは廊下で鳳凰堂・虎鉄が回収し忘れたポスターを見かけたのだった。
張られていた絶技クラブのミュージアムのポスターだ。
演目はSound Horizonの雷神の系譜なのだろうか?
当たりがついたのは…まぁ、事前に虎鉄がSound Horizonに嵌っている事を知ったからだ。
「このポスター、多分作ったのは虎鉄だろうな」
「ふぇ、そうなのぉ?」
たぶんな、と夏優は言うとポスターをこっそり剥がしてコートの内側に仕舞う。

「寮のみんなにも、見せてしまおう。
 どうなるかは知らないけれどな」

言葉とは裏腹に、どうなるかは分かりきった口調で夏優はそう言うと妹を連れて寮に戻った。

へ~んしーん! トウッ!

>大きな爺さん
毎回毎回許可も無く登場させてしまって本気ですいませんです! orz
「狗星さん」は性格的にも外見的にもすっごい好きなタイプのキャラクターなので、ついつい……
コメント、ありがとうございました。

>比留間の中の人さん
うおっ、まぶしっ!
それはともかく、毎回毎回許可も無く登場させてしまってすんませんです! orz
「イドさん」の素敵ベアナックルはオチをつけるのに丁度……ゲフンゲフン……なものでつい……
あ、でも主演男優さんにはちゃんと許可貰ったんですよ?(マテ

>夏優たちの背後さん
「いちまぁーい、にまーい、さんまーい………」
 夕陽も落ちた学園に不気味な声が響く。
「よんまーい、ごまーい、ろくまーい、ななまーい………」
 すすり泣くような声は、どうやら何かを数えているらしい。
「はちまーい、きゅうまーい………」
 そこで声がピタリと止まった。
 そして―――

「にぃ~まいも足ぁりませぇぇぇぇぇ~~~ん!!!」

 こえは じつに むなしく ひびいた。
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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