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虎鉄の日記:破り取られたページその3

 自室で日記を綴っていると、軽快なノックの音が耳に届いた。
 どうぞお入りなさい、と答えると、ドアを開けて海部野・冬美さんが入ってきた。
 失礼しますわ、と頭を下げる冬美さんの姿を見た途端………なにやら頭痛にみまわれた。
………あれ、なーんかこんな事がなんどもあったようななな?


「突然ごめんなさいね?」
 くすくすと笑いながら部屋の真ん中まで歩み来る冬美さん。
 ガラクタがいたる所に山積みになっている私の部屋では、まぁ、確かに真ん中くらいしか開いたスペースはありませんが、それにしても。
 微かな笑みを浮かべながら髪を弄う冬美さんを気付かれない程度に観察する。
 部屋の真ん中。
 唯一整然と開いた床の上に立つ彼女の姿は、まるで己が領土に君臨する女帝の如く自信に満ち満ちていて、他人の部屋にいるという気後れも不安もまったく窺えない。
 おそらく、彼女は自分を信じているのだろう。
 それが意識的にか無意識的にかはともかく、『自分』というものに確固たる誇りがあり、そして、それをまったく恥じていない。
 それは強さだ。
 そしてその強さこそが、彼女の立ち姿をまるで光り輝くかのように見せていのでしょうねぇ。
……凄いなぁ。
 なんとなく見蕩れてしまう。
「……? どうかなさいました?」
 首を傾げる冬美さんの仕草にハッと我に返る。
 おっと、いけないいけない。
「いぃえ~? どーうもしませんよぉ?」
 手近なガラクタの山から椅子を一脚引っ張り出して勧めてみる。
「で、今日はいったいどうしたんですかぁ~?」
 時刻は午前一時少し前、深夜と言っていい時間である。
 夜更かしは美容の天敵ですよぉ~とお道化てみせた私に、椅子に腰掛けた冬美さんは実に優雅な微笑で、「写真です」と答えました。
「先日の談話室での写真を受け取りに、ですわ」
「写真……って、アイタタタタタタタタ!」
 痛っ! 頭が痛い!!
 なーにか覚えのある痛みが脳天で炸裂しましたよ?!
「ちょっと、大丈夫ですの?」
「だ、大丈夫です。えっと、写真というとアレですか? 先日談話室で騒いだ時……の……?」
 おや? なんだろう、何かを忘れているような?
 違和感に思わず首を捻る。
 と、また頭がズキズキと痛み出したので思考中断。
 うーん、これは考えない方がいいって事でしょうかねぇ。
「え~っと、ああ、写真でしたねぇ? はい、これです」
 まだ釈然としない、という顔の冬美さんにベッドの下の方々から受け取った写真を差し出す。
 冬美さんは受け取った写真を一枚一枚楽しそうに目を通していって、ある数枚の写真に辿り着いたところで動きを止めた。
「あの………これは?」
 冬美さんが不思議そうに眺めている写真に写っているのは、他ならぬ冬美さん自身でした。



「おやぁ、何か問題がありましたかねぇ~?」
「問題というか……私が撮影をお願いしたのは、たしか」
「えぇ、たしか『可愛い姿をたくさん撮っておいて』と言われましたねぇ~? どういう訳か誰の可愛い姿かは思い出せないんですが……まぁ、だから撮っておいたんですよ? 可愛い女の子、をねぇ」
「へ?」
 冬美さんは一瞬何を言われたのか判らない、という顔をして、次の瞬間火が出るほどに赤面した。
 ふむ、可愛いなぁ。
 にやにやと笑いつつ、いつもの調子が戻ってきた事を実感する。
 うーん、やっぱりさっきまでの頭痛は気のせいだったんですかねぇ?
……ふふん、しかしどうやら喜んで貰えたようですし、ここでもう一つプレゼントといきますかねぇ。
「どうです~可愛く撮れてるでしょう? いやぁ、貴女にも見せたかったなぁ」
「あ、はい。ありがとうござぃ……」

「その写真を見せたときの夏優さんの顔」

「……ます」
 びぎり、と冬美さんの動きが止まる。
 ふっふっふ、どうやら喜んでもらえたようですねぇ。
 まぁ、可愛い妹さんのさらに可愛いお姿ですから、やっぱりお兄さんにも見てほしいんじゃあないかと思って気を利かせておいて正解だったということみたいですねぇ。
 ふっふっふ、いい事したなぁ……って、おや?
「どうしました冬美さん?」
 気付けば、冬美さんがゆら~りと実に不吉な効果音と共に立ち上がっていました。
 そして、その手には見るからに凶悪なデザインのハンマーが。
「うふふ、うふふふふ………兄さんに、見せたんですか………」
 ブツブツと呟きながらハンマーを振り上げる冬美さん。
 その姿に
「あ、ああああああああああ! 思い出し――っふげごぇッ!!
 最後まで口にする事無く、私の意識は体と一緒にブッ飛んだ。


―――後日談。
 翌朝、虎鉄が目を覚ましてみると、机の上に自分の日記帳が置かれている事に気が付いた。それを見て、違和感に首を傾げる。
 見てみると、日記は三日分のページが破り取られているようだった。
 虎鉄はますます首を傾げ、結局答えが出なかったので、静かに日記帳を閉じた。 
 そのまま部屋を出てみると、ちょうど起きてきた夏優と出くわした。
 夏優の頭にはそれはそれは大きなタンコブができていた。
「それ、どうしたんです?」
「判らん。ただどうにも昨日の記憶が曖昧でな……それより、お前こそどうしたんだ?」
 夏優に指差されて、虎鉄は自分の頭にも同じようなタンコブが出来ている事に気づいた。
「あ~、判りませんねぇ。そういえば私もここ数日の記憶が曖昧な気が……」
 二人そろってうーん、と首を傾げる。
 結局何も思い出せなかったので、私達はそこで別れた。
 これはただ、それだけの話である。
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後日談の後日談

部屋に戻った夏優は、頭に冷えピタを貼り付けてから週に一回の割合で行っている詠唱兵器の整備を行おうとした・・・のだが。
「アレ? なぁ二人とも、俺のハンマー知らないか?」
「ふぇ?知らないよぅ?」
「あぁ、コレですか?」
そう言って冬美から差し出されるハンマー。
ちょっと凶悪なイメージを持たせるが、そこがカッコイイとか思っている夏優のハンマーだ。
「あぁ、コレコ…レ…グッ」
渡されたハンマーを見て一瞬だけキツイ頭痛に見舞われる夏優。

見ルナ、思イ出スナ、封印セヨ、ソノ記憶ヲ

理性と本能、両方からの警告。
夏優はその警告に従うことにした。
「すまん、冬美、これやっぱいいや、お前が貰ってくれ」
「あら、よろしいんですの?」
若干の驚きと喜びの混じった言葉で問う冬美。
「あぁ、良い、お前が持っとけ」
夏優としては厄介払いのようなものだが、冬美のほうは存外に喜んだようだった。
夏優はなんだか一瞬、イロイロな意味で早まった気がしなくもなかったが、
喜んでいるんだから良し…ということにした。
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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