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虎鉄の日記:破り取られたページその2

 自室で日記を綴っていると、控えめなノックの音が耳に届いた。
 鍵なら開いてますよ、と答えると、ドアを開けてマクスウェル・アインバイパーさんが入ってきた。
 ドアの前に佇むマクスウェルさんの姿に、何故だろう、デジャヴュを覚えた。
………はて、なーんか前にもこんなことがあったような?


「お邪魔ではなかったでしょうか?」
 ドアから入ってすぐのところに立ったまま、ちょこんと首を傾げるウェリーさん。
 格好はもちろんいつも通りのメイド服である。
……うーん、今まで想像してみた事もありませんでしたが、自分の部屋にメイドさんが立ってるっていうのも結構もの凄い光景ですねぇ。
「いえいえ、まったくそんな事はありませんよ? さ、どうぞどうぞ~」
 部屋のかなりのスペースを占めるガラクタの山から椅子を一脚引っ張り出して勧めてみる。
「では、失礼します」
 ウェリーさんは丁寧に頭を下げるとトテトテとこちらに歩いてきて、また一度、軽く頭を下げてから私の差し出した椅子に腰を下ろした。
 随分と礼儀正しい人である。
 書いていた日記を閉じるフリをしながら密かにウェリーさんを窺ってみる。
 ウェリーさんは椅子に大人しく腰掛けたまま、それでもやっぱり部屋中に山積みになっている国籍も用途も種類もデタラメなガラクタに興味が引かれるのか、キョロキョロと物珍しそうに部屋を見回していた。その時折に何気なく見せる髪を払う仕草だとか、用途不明の物品を見つけてきょとんとする表情だとかが、どうにも不思議なくらいに女性らしい。
 ってゆーか、
「……可愛いなぁ」
「ふぇっ?」
 びくっ、と硬直するウェリーさん。
 おっといけない。和みすぎてついつい言葉が出ちゃってましたか。
「えっと、いま何か?」
「いえいえ~気のせいでしょう。で、今日は一体どのようなご用件ですか?」
 時刻は深夜。
 日付が変わってから、時計の針がもうすぐ一周するというような時間である。
 礼節に通じるウェリーさんがこんな時間に訪ねて来た以上、なにか私に用事があるのでしょう。
 案の定、ウェリーさんはよく聞いてくれました、と言わんばかりに微笑んで、
「実は先日の談話室での写真を鳳凰堂様が持っていると聞いたので……」
「談話室での写真? って――あ、アイタタタ?」
 え? なんですかこの頭痛?
『談話室での写真』という単語を聞いた瞬間に頭頂部が割れるような痛みを訴えてきましたよ?
 頭頂部といえば、先日目を覚ましたらどういう訳かいきなりでかいタンコブができていた場所。しかも結局、なんでタンコブなんてできたのかも判らずじまいでしたし。
 ひょっとして、今の単語と何か関係のある事柄だったのでしょうか?
「鳳凰堂様? だ、大丈夫ですかっ?」
「あ、大丈夫です大丈夫。えっと、談話室での写真というと~アレですか。先日の、ウルさんや冬美さんと騒いだ時の?」
 あれ? なんかもう一人忘れているような………?
 ちょっとした違和感に思わず顔を顰めそうになって、すんでのところでウェリーさんが心配そうな表情をしている事に気付きました。
 おっといけない、笑顔笑顔。
「っと――あぁ、もうできてますよ~?」
 誤魔化すように――まぁ、実際に誤魔化している訳ですが――ベッドの下に手を差し出して、現像してもらった写真を受け取りました。
 一瞬ウェリーさんの顔がひきつったように見えましたが、まぁ気のせいでしょう。
「はい、これですね?」
 どうぞ、と受け取った何枚かの写真をウェリーさんに手渡しました。

「わぁ………」
 恥かしそうに、けれどそれ以上に嬉しそうに写真に見入るウェリーさん。
 ふっふっふ、そうでしょうそうでしょう。
 なにせ私も現像からあがってきた写真を見たときには小一時間ほど釘付けになりましたからねぇ。
「綺麗に撮れてるでしょう? カメラマンの腕はともかく、なにせ被写体が極上ですからねぇ」
「え? ぁ……はい。ありがとうございます……」
 ぽわぽわと答えるウェリーさん。
 あんなに顔を真っ赤にしちゃって、どうやら喜んでいただけたようですねぇ。
 う~ん、こうなるともう一つくらい喜ばせてあげたくなるじゃあないですか。
「そういえばウェリーさん……というかアインさんですね、先日夏優さんの部屋に遊びに行ったそうですねぇ? その時の写真も冬美さんがこっそり渡してくれてますよぉ~?」
「――へ?」
 ぎしり、と固まるウェリーさん。
 ふっふっふ、どうやら興味を持ってもらえたようですねぇ。
 ですがここで畳み掛けてはサプライズの喜びも半減するというものです。
 話術の極意は引いて離して持ち上げて落とす事。ここはウェリーさんが興味を持ったことに気付いていないフリをして、写真を探して焦らすのが正解ですねぇ。  
「いやぁ~、それにしてもこれまた可愛らしい写真でしたよぉ~? アインさんの新しい一面というか新境地と言うか、新たな可能性を垣間見た気がしましたよ~」
 そういう訳で、ウェリーさんに背を向けてベッドの向こう側を探してみる。
 勿論これはフェイク。
 本当は、写真はすでにベッドの下の方々によって渡してもらっているのですよ。
「そうかい………それは良かったなぁ」
 後ろからウェリーさんの声。
 ふっふっふ、そんなに声を押し殺して、どうやら興味を持っている事が気恥ずかしくて隠そうとしているようですが……残念ですねぇ、私にとってすれば、声の調子やイントネーションからそこに含まれる感情を推察する事など容易い容易い。
 にしても、なんか今口調が変わっていたような?
「ところでその写真、もう誰かに?」
「いえ~? まぁ~だ誰にも見せてませんけどぉ~?」
「そうか………そりゃ良かった」
 おっと、そろそろ頃合ですかねぇ。
 きっと今頃ウェリーさんは期待に胸膨らませて私が振り返るのを今か今かと待ち侘びているのでしょう。では、そのご期待に応えることとしましょうか!
 私は満面のうふふ笑いをなんとか噛み殺し、いかにも今ちょうど写真を見つけたんだ、という顔をして振り向きました。
 さ、ウェリーさんの花咲くような笑顔とごた~いめ~ん。

「つまり――ここでてめぇを黙らせちまえば、話は終わりって事だなぁ鳳凰堂?」 

 ってげげぇー! ア、アインさんっ!!
 振り返ったそこには、いつの間にかイグニッションを完了したアインさんが自分の体より大きな斬馬刀を振りかぶって微笑んでいました。
 わぁ、なんて素敵な微笑みでしょう。
 たしかあれは、そう………殺ス笑み?
「ちょ、待って! 話せば判ります! そ、そんなんで殴られたら今度こそ死んじゃいますよぉ!?」
 ああああああああああああ、お、思い出した!
 そう言えば先日も浅葱さんが部屋に訪ねてきて同じような事をやったのでした!
 そん時に頭を殴られたショックで記憶を失ってたんだな私!
 あぁ、どうしてそういう大事な事を今まで忘れてるんだ私!
 畜生! グッバイ私!!
「さて、言い残す事があるなら聞いてやるぜ鳳凰堂?」
「えっと、あはーは………それじゃあ、一つだけ」
「おう、言ってみろ」
「アインさんだってウェリーさんに負けず劣らず可愛かったですよ――あべしっ!!


―――後日談。
 翌朝、虎鉄が目を覚ましてみると、机の上に自分の日記帳が置かれている事に気が付いた。それを見て、違和感に首を傾げる。
 はて、昨日は日記を書いただろうか?
 よくよく見てみると、日記は二日分のページが破り取られているようだった。
 虎鉄はますます首を傾げ、結局答えが出なかったので、静かに日記帳を閉じた。 

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神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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