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虎鉄の日記:続・ある冬の日の出来事

×月□日(天気 ロケットずどーん)

 そろそろ今年も終わりですねぇ。
 さすがに年末も近いとあって最近は寒い日が続きます。
 私なんかはコートを着込んでいますが、それでも朝夕の寒さは堪えるものがありますよ。
 そういえば、他の方々はどうやってこの寒さを凌いでいるのでしょうか?
 ちょっと教えてもらいに行きましょうか。

………と思ったのですが、どうも前回は聞く相手を間違ったようですねぇ。
 今度はもうちょっと簡単な方法を教えてもらえると良いんですが。
 どうなる事やら………


「で、ワシのところに聞きに来た訳じゃな?」
「まー、そういう訳ですねぇ」
 放課後の結社『絶技クラブ』道場。
 私は板張りの床に胡坐をかいて狗星さんと向かい合っていました。
 我らが絶技クラブの最終防衛ラインにしてしょっちゅう暴走するメンバーを温かく見守るお父さん役、質実剛健の偉丈夫たる天流狗星さんは、ふむ、と天井を仰ぐと、
「まあ、確かに最近の冷え込みは堪えますからのう」
 遥かな年月を生きた大樹を思わせる体を揺らして呵呵と笑った。
「そうなんですよぉ~。それにホラ、私ってあんまり肉がつかない体質なもので~、この寒さは余計に堪えるんですよねぇ~」
 ちなみにそれは体質のせいと言うより日々の鍛錬によるものが大きいのですが、そこは割愛。
「ま、道理じゃな。皮下脂肪には体温を保つ効果もあるからのう、どうしてもと言うんじゃったら沢山食って肉をつければよかろうに」
「いやぁ~、あんまり肉をつけちゃいますと、今度は動けなくなっちゃいますからねぇ~」
「ジレンマじゃのう」
「ハリネズミみたいですねぇ」
 何気ないやり取りに笑いあう。
 さて、それではそろそろ本題と参りましょうかねぇ。
「まー、そういう訳でして……狗星さんは、どうやって寒さを凌いでらっしゃるんですかぁ?」
 まぁ、この人も大概は作務衣ですし、天狗の秘術かなんかで体温調整をしてるんじゃないかなー、とは思っているんですが。
「………知りたいかの?」
 狗星さんは器用に眉を片方だけあげると、にやりと笑いました。
 その、普段は見ない表情にちょっとビビる。
 しかしここまで来て引く訳にも参りません。
 是非、と私は頷きました。 
 すると狗星さんはニヤリ笑いをいっそう深くして、 
「おぬし、わしが暗器術の応用で他人の服の下を見抜けるのは知っておるじゃろ?」
「へ? ああ、そういえば以前聞きましたねぇ~」
「うむ、それをさらに極めるとのう、服が透けて見えるようになるんじゃよ」
「な………………ッ! まーさかその術を使って道行く女性はおろか鍛錬に励むイドさんや飛鳥さんのあぁぁぁ~られもない姿を眺めて気分はウッハウハ興奮物質ブラッドヒート俺のモチベーション無茶苦茶高ぇぜアドレナリンドッパドパだぁ!だから寒さなんて感じないという事ですかぁ~!? そんな秘術を独り占めしてるなんて!! なーんて羨まし……じゃあなくてけしからん!! 

是非私にも教えてください!!
 
「いや、まあ冗談なんじゃが」
「ガッデム!!」
 なんて事だ! 信じていたのに!! 期待していたのに!
 裏切りましたね! 私の気持ちを裏切りましたね狗星さんっ!
「いや……なにも泣かんでも」
「世の中には言っていい冗談と悪い冗談があるんですよ狗星さん」

 かくなる上は仕方ない、この罪の重みを教えてくれん――と拳を握ろうとしたところで、

「随分と……楽しそうだねぇ鳳凰堂くん?」

 背後から、声がかけられた。

 ビシリ、と背筋が凍りつく。
 ケツの穴にツララを突っ込まれたような感覚に身動きが取れなくなった。
「あー、鳳凰堂殿? もう判っとると思うが……今振り向いたら、おぬし死ぬぞ?」
 ああ、狗星さん。
 ご忠告は大変有難いのですが、そーいう事はもっと早く言ってもらえませんかねぇ!?
 とは口には出せない。
 代わりとばかりに視線に切実な想いを乗せる。即ち、タスケテ。
 私のメッセージを受け取ってくれたのか、狗星さんは無言で頷くと、
「では、あとはお若い二人に任せてわしはお暇するかのう」
 棒読みゼリフと共にそそくさと去っていった。
 ポカーン、と見送ること数秒。
「ちょっ、狗星さん?! 待って、待ってくださいぃぃ! 貴方に見捨てられたら私、もうどうしていいかわかりませんからぁぁぁぁっ! プリィィズ! カムバックプリィィィィズ!!」
「鳳凰堂くん?」
「はいっ!?」
 反射的に直立不動。
 銃殺刑に処させる捕虜よろしく硬直する私の後ろから、優しげな声がかけられる。
「随分と楽しそうに話してたねぇ? いったい何の話をしてたのかな?」
「あ、アーハー……ちょっと現代社会における若者の国家に対する帰属意識の低下について」
「へぇ……私にはとてもそういう話とは思えなかったけどねぇ」
 き、聞こえたんじゃあないですかー!
 とは勿論ツッコめるはずもなく、振り向く事もできないまま、そーでしたっけねぇ、などと空っとぼけてみました。
「ねぇ、鳳凰堂くん?」
 いつの間に近付いてきたのか、上質なシルクのように心地よく響く彼女の声は、私のすぐ後ろから聞こえてきました。
 言葉と共に流れた吐息が、首筋をするりと撫でていきます。
 そのなんとも甘美な感触に緊張の種類が変わりそうにな――ったところで、突如尖った爪先に背中を抉られました。
「オギャァァァァァァッ!」
 か、肝臓! そこ肝臓の位置ですからっ!!
 悶絶モノの激痛をなんとか直立不動のまま耐える。
 ここで逃げたりすれば、余計に事を悪化させるだけなのは判っていました。
 かと言って倒れたり振り向いたりしようものなら、間違いなくロクな事にはならない――そう、本能が叫んでいる。
 ここで振り向けば、二度と明日の朝日は拝めない、と!
 だからこそ動かない事を選択したというのに、
「鳳凰堂くん……ちょっと話したいことがあるから、こっち向いて?」「はい、なんでしょうっ?!」
 その言葉に、私はあっさりと振り返っていました。
「あ………」
 気付いた時にはもう遅い。
 私の目の前には、鳳翔・飛鳥さんのかつて見たことも無いほどに素敵な微笑がありました。
 ああ、なんて美しい。
 この世に女神なんてものがいるとすれば、それは今私の前にいるこの人だと断言できる。
 なにせその微笑の素晴らしさときたら、私なんてミテイルダケデシンゾガトマリソウデスヨ?
「覚悟は、いいかな?」
 微笑んだまま、問う飛鳥さん。
「一応聞いておきたいんですが……良くない、って言ったら見逃して頂けたりします?」  
「見逃すと思う?」
 微笑んだまま死刑宣告。
「ですよねー! あっはっは、馬鹿だな私ってば何言ってるんでしょうねぇ~!」
 あっはっは、と爆笑してみる。
 もうヤケっぱちであった。
 

―――後日談。 
 結局、原因不明の重体で医務室に運び込まれた鳳凰堂・虎鉄が朝日を拝んだのは、三日後の朝の事であった。
                                  チャンチャン 
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神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
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