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よく判らないもの

 巨大企業のビルディングが並ぶオフィス街。
 墓標のように並び立つオフィスビルの一つ、その一階受付で、朝居・朝子は一人溜め息をついた。


 なぜ受付嬢である自分が残業などしなければならないのか――そんな不満と疑問を、溜め息に乗せて体の外に吐き捨てる。
 そうでもしなければやっていられなかった。
 そもそもがおかしな話だったのだ。
 昼頃、いきなり重役室に呼び出されたと思ったら顔しか知らないような社長秘書とやらから突然残業を命じられた。まだ入社して日が浅い彼女には断る事こそできなかったが、だからと言って不満がない訳ではない。
 それに、疑問がある。
――何故受付が残業などしなければならないのか。
 もう会社の通常営業時間はとっくに過ぎてしまっている。残っているのは警備員と、自分と同じく残業を言い渡された不運な社員だけである。受付の仕事などあるとは思えない。いや、ちょっと待った……そういえば今日は、なんだか偉そうな雰囲気の人が何人も訪れていた気がするが、帰って行ったのを見た記憶が無い。ひょっとするとまだあの人達が社内にいて秘密の会議でもしているのだろうか。それで、まだ後から来る人がいるから、自分が案内役として残されているのだろうか……
「………まっさかねぇ」
 我ながら馬鹿馬鹿しい、なんだ秘密の会議って漫画の読みすぎじゃないだろうか。
 と、彼女がそんな風に溜め息をついたのと、正面のドアが開いたのはほぼ同時だった。
 冷たい夜のにおいとを連れて、真っ黒な人影が入ってくる。
 まるでそこに居るのが当たり前であるかのようにこちらへと歩いてくるその姿に、朝子は違和感を覚えた。
 まず最初に、その服装。
 塗り潰したように艶のない黒のスーツ。それだけなら、企業の受付として毎日スーツ姿を見慣れている彼女にとっては驚くに値しない。だが、その人影が実に着けているのは明らかにそれらとは違う、そう、それはむしろ喪服と呼ばれる服装だった。
 次に、その手に持っているもの。
 鞄ならともかく、長さ一メートル以上はあるだろう白木の棒。普通、そんな物を持ってこのオフィス街を歩く人間はいないだろう。しかしなんだろう、その白木の棒切れはどこかで見た事があったような気がした。
 だが、それよりも。
 それよりも、その人物の年齢だ。
 黒縁の眼鏡をかけ、茶色の髪を後ろに撫で付けたその顔は、どう見ても二十代には見えない。朝子自身もまだ二十代前半と若いが、その男は明らかに彼女より年下で、男と言うより少年と表現するべき年齢だった。
 どこからどう見ても違和感ありありな少年は、真っ直ぐに彼女のいる受付に向かって歩いてくる。そのあまりの怪しさに、一瞬警備員を呼ぼうかとも悩んだが、結局彼女はマニュアル通りの対応を選んだ。
 つまりは、頭を下げて「いらっしゃいませ」と挨拶をした。
 そして顔を上げて、
「ひっ」
 いつの間に近付いてきたのか、すぐ目の前、キスでもできそうなくらいの距離に顔を寄せてこちらを覗き込んでいる少年に、思わず悲鳴をあげていた。
「一つ、訊きたいんだけどなおねーさん」
 少年はニタリと、それこそニタリとしか形容できない歪んだ笑みを浮かべて、言った。
「おねーさんアンタ、仕事と命のどっちが大事?」
 それは、唐突と言えばこの上ないほどに唐突な質問だった。だが、あまりの唐突さに彼女が呆気に取られている内にも、少年はニタニタと笑いながら言葉を続ける。
「仕事の方が大事なら、そのままそこに立ってるといい。だが命の方が大事なら、今すぐ家に帰って布団被って今日の事は全部忘れて寝ちまいな」
 な、なにを……何を言っているんだこいつは。
 朝子は軽いパニック状態に陥りながらも、少年の言葉を咀嚼しようとしている自分に気が付いた。普通に考えれば性質の悪いイタズラだ。警備員に連絡して丁重にお引取り願うのがマニュアル通りの対応である。 だが、それができない。
 できないでいる内に、脳天気なメロディーがガランとしたホールに鳴り響いた。
 少年は彼女へ向けていた興味をあっさりと全撤去し、ポケットから携帯を取り出すと耳元に当てた。
「俺だ――あぁ……はい、はい…………はい、了解」
 少年は早口に何事かを呟いていたかと思うと携帯をポケットに放り込み、再び視線を彼女に向けた。
 その顔には、例の歪な笑みが浮んでいる。
「悪いなおねーさん、時間切れだ」
 少年が片手に提げていた棒を両手に持ち替えた。
 右手と左手がスライドし、白木の棒の間からスルリと刀身が抜き出される。それで、彼女はやっと理解した。道理で、どこかで見た事があると思った。任侠映画などに登場する、白鞘とも呼ばれるそれは―――
「仕事に殉じな」

 あ、日本刀だ。

 それに思い至ったのと同時、朝居朝子の思考は固い床にゴトリと落ちた。


 軽く振って血払いを済ませた刀を担いで、少年は嗤う。
 ニタリニタリと、歪に歪んだ笑顔で哂う。
「命令復唱――現時刻より制圧を開始。鳳凰堂・虎鉄は正面玄関より潜入、対象建造物内の全生物を殺害し離脱せよ。離脱後、対象建造物は証拠諸共爆破する――か」
 
「さぁ―――鳳凰堂を始めよう」
 誰もいなくなった夜に。
 血に餓えた虎が、笑う。




「………と、まぁそんな感じで、私も昔はワルだったんですよ」
「グダグダ長文並べた上でそんな嘘ブッこきますか貴方は」
 とある休日。
 とある学園のとある寮の一室で交わされた、とあるサングラスの少年とその弟子である少年の会話であった。
  
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非公開コメント

それ、どこの殺人鬼一賊ですか(笑)

どっかの13課の職員にしかみえねぇよ(苦笑)

これは・・・

俺も昔語りをするべきか?(触発された)

むはー!

>光也さんの背後さん
でも、私現在とある結社では『レン』と呼ばれてますですよ~?
勿論妹勧誘中です~ww

>レイヤさんの背後さん
いやぁ、さすがに脳天ぶっ飛ばされたら死にますからー。
銃剣とか聖書とかはクルス君の担当ですww

>夏優さんの背後さん
……いや、嘘七割冗談二割本当一割程度の話なのですが(汗
それはそれとして昔語りは聞きたいですねぇ~、期待大ですよぉ~

こちらでは初めましてー。
以前から覗かせていただいてはいたのですがw
「鳳凰堂を始めよう」の台詞に反応して思わず足跡を…

うふふ―――うふ

おやおや、これはこれは可愛い可愛い私の妹、虎織ちゃんじゃあないか。
うふふ、うふ―――これは驚きだね、驚かされてしまったね。まさか見られていたなんて思っても見なかったよ。うふ、虎織ちゃんも人が悪いなあ。そんなにこの私の赤裸々な日常が垣間見たいのなら、そう言ってくれれば良かったものを。うふふ、いやいや、恥ずかしがらなくてもいいんだよ。お兄ちゃんはちゃ~んと判っているよ。恥ずかしがりやさんな君の事だ、いくら敬愛するお兄ちゃんが相手だとはいえそんな事を口に出来る性格ではないと、私はちゃーんとわかってr(以下30分ほど喋りっぱなし)
………と、言う事で。
是非ともまた遊びに来て下さいねぇ~。
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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