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どこかのだれかのたんじょうび

―――イドさんが15歳になったらしいよ。

 ある朝鳳凰堂・虎鉄が目を覚ますと、自分の腹の上でクルクルと踊る妖精さんがそんな言葉を口にしていた。

――バンッ。
 ほんの一瞬の躊躇いも無く、虎鉄は平手で妖精を叩き潰した。
「…………虫か」
 なにやら叩いた瞬間に「ぉごげぎゃっ」とかそんな感じのイヤーな声が聞こえた気もするが、まあ気のせいだろう、と彼は判断した。この男、低血圧という訳でもないが寝起きが微妙に悪い。虫を叩いた右手を見てみると、何かヨクワカラナイものが手の平にこびり付いていたが、彼は特に気にも留めずにベッドサイドのティッシュでそれを拭い、丸めてポイと捨てた。
 暖かい布団から抜け出して、ぐぃと伸びをする。
 ああ―――今日もスガスガしい朝だ。
 明らかに真昼を指す時計を尻目に、鳳凰堂・虎鉄は爽やかに笑った。

 そして、昼休み。
 つまりは虎鉄が登校して間もなく。
「―――へ? 今日がイドさんの誕生日?」
 屋上の隅っこの方で、虎鉄は素っ頓狂な声をあげた。
 対面に立つ少年が、ああ、と頷く。
 黒い髪を風に遊ばせ、涼しげでありながらどこか鋼を思わせる光を双眸に宿した少年の名は、狢・蓮。虎鉄の所属する『絶技クラブ』の部長であり、虎鉄の友人でもある人物だった。
「なんだ、知らなかったのか?」
「あー、言われてみれば、つい最近どこかでそんな話を聞いた気がしますねぇ………」 
 それが今朝の出来事で、それを自分に伝えてくれたナニカをその手で圧殺した挙句丸めたティッシュと共にゴミ箱へ放り込んだ事を、彼はまったく覚えていなかった。
「まあいい、話を本題に戻すぞ」
 一拍置いて、黒髪の少年は切り出した。





「虎鉄―――付き合ってくれ」
「だが断る」
 
 即答であった。
 シークタイムゼロセコンド、脊椎反射で答えたヨの如く即答であった。
「……何を勘違いしているのかは知らんが、イドへの誕生日プレゼントを手に入れに行きたい。それに付き合ってくれ、と言っているんだが」
「蓮さん、とーりあえず本当に本題ド真ん中から話し出すのはやめにしましょうよ。心臓に悪いです……」
 一瞬よぎったおぞましい感覚の余韻にダラダラと嫌な汗をかく虎鉄の言葉に、ふむ、となにやら尤もらしく頷く狢。
――畜生、実はこの人判っててやってるんじゃないだろうな。
 狢とは化かす生き物である、と言うが、なんか化かされてるとゆーより馬鹿にされてるんじゃなかろーか。
「って、ちょい待ち。蓮さん、今な~んて言いました?」
「む? なにか変な事を言ったか?」
 くりん、と容姿に似合わぬ幼げな仕草で首を傾げる蓮。だが、虎鉄は今度こそ騙されなかった。ガッシ、と彼の両肩を掴み、覗き込むように――虎鉄の方が蓮より幾分か背が高いせいで少し背を屈めなければならなかったが――視線を合わせ、引き攣った笑顔で問う。
 クエスチョン。
「買いに行く、じゃあなーくて、“手に入れに”行く?」
 アンサー。
「ゴーストタウンにな」
 虎鉄の両手から力が抜けた。
 ガクリと膝を付き、力なく下げた手が体の前で重なった。
――嗚呼、神様。
  いるならどうか殴らせて下さい。
「蓮さん………」
 それは、地獄の底から響いてくるような声だった。
「なんだ?」
「どこの世界に………女の子への誕生日プレゼントを戦場で獲得する男がいるっつーんですかぁーーーーッッ!」
 虎が吼えた。
 猛烈な勢いで立ち上がり、天も裂けよ地も割れよついでに月でも堕ちてこいとばかりに咆哮する。鳳凰堂・虎鉄、軽いナリとノリの割には結構ロマンチストと言うか、どうやら男女の関係を神聖視しているようだった。対して狢・蓮は虎鉄の裂帛の気迫にも眉一つ動かさず、静かに、朝露に濡れる刀身のような声で問うた。
 クエスチョン。
「お前がこの前、飛鳥に渡した首飾り………」
 アンサー。
「すいませんでした>orz」
 残像すら残した土下座であった。
 さらにクエスチョン。
「先日お前が飛鳥に渡した指輪やら何やら………」
 さらにアンサー。
「狗と呼んで下さい……ってゆーか、なんで知ってるんですか!?」
 無言で監視カメラのメモリーを取り出す蓮。
 目にも留まらぬ動きで奪い取る虎鉄。
 さらに懐から数本のメモリーを取り出し、走り出す蓮。
 コンクリートのタイルが踏み割れる程の加速で追いかける虎鉄。
 生徒で溢れた廊下を蛇のように風のように駆け抜ける黒い狢。
 いつの間にかイグニッションして魔天の如く天井を翔ける鳳凰堂。

 後に『昼休みデス・チェイス』として銀誓館学園に語り継がれる伝説の阿呆二人は、そのままゴーストタウンまでの道程を走破したという。 

―――後日談。
 結局、彼らが話題の少女へのプレゼントを手に入れられたのかどうかは、神のみぞ知る。ちなみにその日、完全に丸一日分の授業をブッチした虎鉄は、翌日職員室でとてもとてもなが~い御説教を受けることになったが、それはまた別の話。
 

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愛すべき馬鹿(注:ほめ言葉)どもよ…

後日談。
ブツと共に届いた手紙を読み、悶えて転がる比留間イド。

が、手紙を裏返してそれがチラシを再利用したものだという事に気がつき、憤慨。
「むきゃー! ぶっ殺しますー!!!」
「ぎゃぁぁぁぁああ!!?」
わけもわからず狢氏は逃げ続けたとかそうでないとか。
プロフィール

神無月

Author:神無月
神無月(かんなづき)と申します。

主に株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のブログとしてなんか色々とまったりペースで徒然事が書かれています。
いぇー。

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